染織あれこれ(42)
本金糸天幕と心意気
「山車幕」 《に》

●「本金糸七宝つなぎ」の手編み作業
■平成14年1月

 佐原市上仲町の「山車天幕」が完成した。昨年八月お話しがあり、十月の受注。製作に半年を要した。

 上仲町の屋台(やだい=山車)は江戸時代建造。明治二十五年大火で消失。三十四年再建。天幕は消失をまぬがれたが老朽、痛み激しく「山車建造百周年記念」に新調となった。

 幕と言っても裂地や織物ではない。『本金糸』で編んだ「編(網)天幕」。直径3cmほどの「七宝つなぎ」を手づくりで「一枚の幕」に編み上げる。

 サイズは長さ約十一m五〇。丈は六十七cm。上部十五cm、両端部は八cm巾の赤色の額縁付き。下部には十二cmのフレンジ。当初、七宝は十五段としたしたが、全て手作業、職人の手編みの〃成り行き〃に任せた。

 ところで、九月十一日、ニューヨークの同時多発テロで金相場乱高下。一抹の不安もあったが、百周年の〃慶事〃に各社が協力、事なきを得た。

 本金糸の産地は京都府城陽市。金糸をさらに遡れば「金箔」。金箔は石川県の金沢市。いずれも地場の伝統産業に支えられている。

 『金糸』と言えば打掛・丸帯・袋帯、キモノに入る金糸や刺繍を思い浮かべる。「校旗」の刺繍やフレンジ、飾り房を思う人もいるかもしれない。

 日本の金銀糸の歴史ははっきりしないが、正倉院宝物の中の「綴れ織」には『平金糸』が使用されているものがある。中国や朝鮮半島から持ち込まれたのが始まりだろう。

 城陽の金糸、日本全国に運ばれ広く織物に使われてるが、どちらの産地に聴いても、「金糸その物の幕は聞いた事がない」のご返事。本金糸天幕、希有の存在。

 佐原の大祭は夏と秋の二回だが、諏訪神社の秋祭りには「編天幕」の屋台はない。
 七月は八坂神社。「盛夏の大祭」に豪奢と〃涼しさ〃も求めたのだろうか。曵き廻し十台の屋台のうち、四台が「編天幕」だ。

 大祭に込める先人の心意気とシャレに感服。継承、発展させる人々にも敬服。
船橋市民新聞 2002年 4/1発行 第42号