染織あれこれ(53)
町人文化から更に花開く
「江戸小紋」(えどこもんsい》え《い》

●「斧琴菊」の江戸小紋手拭い(一部)
利休ネズミの地色に藍染め一色


 今年は、徳川家康公が江戸幕府を開いて四百年。

 首都・東京では江戸開府400年事業推進協議会を結成、一年を通して記念イベントが展開されている。

 テーマは『江戸東京の魅力再発見と未来への創造』。

 地域や企業などが様々な角度から伝統工芸、産業、文化と江戸の魅力をさぐり東京再生し、今、そして未来に生かす試みだ。

 江戸時代三百年の平和と繁栄の中に育つ文化に『江戸小紋』がある。成り立ちは武士の裃からの「裃小紋」と、町人文化から生まれた「いわれ小紋」。

 全国諸藩、各藩では裃の柄を競って特定の柄を染めた。多くは単色で遠目には無地に見えるが、近づくと繊細な柄が浮かぶ"控えめ"で美しい、独特な文様。

 格子や縞、霰(あられ)などが基本。大小、太さや色に変化があり、最も有名な柄は紀州島津家の『極々鮫』の「定め柄」だろう。

 江戸中期、町人が力を持つと小紋のデザインはさらに花開いた。縁起の良い柄やおめでたい柄をシャレた意匠に模様化する。

 南天の実は「難」が転(天)じて『南天』の語呂合わせ。打ち出の小槌など縁起物の「宝尽し」。竹に雀は相性良く、これを身につけては"良縁"の願い。

 歌舞伎役者も大きな影響を与えた。三代目菊五郎は四本と五本の縞を格子にキと呂を入れ「キクゴロ」。又、斧(よき)と琴と万寿菊を組み合わせて『斧琴菊』の模様を好んで用いた。

 「よき」は「善き」に通じ、中国では物の決断の意味。"よきことをきく"の寓意。「判じ物」として今も浴衣や手拭いに伝承、人気の高い文様となった。

 千葉市・みつわ台幼稚園の卒園、小学生四十三人の「未楽来(ミラクル)太鼓」は発表会の記念品に斧琴菊の手拭いを選んだ。

 日ごろの稽古の成果を見事なバチさばきで演じ「良き・事(音)・聴く」と、皆さんに喜んでもらいたいと張り切っている。

(つるや伊藤・伊藤吉之助)

船橋市民新聞 2003年 3/10発行 第53号