染織あれこれ(25)
完成度高い、造形美の極致


「家 紋」(か も ん)
《い》

伊藤 吉之助(つるや伊藤)

●平安紋鑑、江戸紋章集、紋典が代表的な紋帳
■平安と江戸紋は“いろは”引き、紋典は“五十音”

お孫さんの「七五三」の晴れ着に『加賀縫い紋付き』の色無地を承った。宮本の飯塚様のご注文。真っ赤な長着に紋は「定紋」(じょうもん)ではなく梅・菊・蘭・竹の「四君子」(しくんし)。スッキリと可愛らしく仕上がり、大層喜ばれた。

 「家紋」を衣服につけるのは日本ぐらいかもしれない。「紋章」は世界中どの国・民族にもあって「エンブレム」としては中世ヨーロッパの貴族層・ナイトの紋章が有名。現代も続いている。日本の紋は各自の『家』との関係、名字(苗字)と共に受け継がれている。起源は諸説。一般的には十世紀、平安時代に公家の牛車(ぎっしゃ)や調度品などに家の好みの文様からと言われる。自他の区別をつけて家柄を誇る意味から次第に自他共に認める象徴の「家紋」に定着。

 武士の台頭で機能としての″しるし″から旗・馬印・指物などの標識。武具や建築物、幔幕(まんまく)などに家の紋章が表され、武家社会の確立と共に衣服の『紋付き』となり、一層定着した。女性のキモノに紋を付けるようになったのは江戸時代中期、裾模様に付けた。男紋と区別、女紋と呼び、明治に苗字が平民にも許され「式服」としてどんな家でも紋付きを用意した。

 紋章の数は膨大。標本の紋帳(帖)は「平安紋鑑」「江戸紋章集」「紋典」が代表的だが五千近く表されている。紋帳に無い紋もあり創作紋を加えれば数は無限と言うのが正しいのかもしれない。種類は「天文地理・動物・器物・文様・文字」等あらゆる物。圧倒的に多いのは『植物』。自然に恵まれ″四季の美しい日本″が如実に現れている。

 完成度高い日本伝承デザイン、造形美術極致の『家紋』。キモノで最も効果的に使われるのは「色無地の着物」。一色の無地だから紋がポイント。紋の有る無しで格が違う。技法は「染め抜き」と刺繍の「縫紋」があるが、飯塚様は多彩な色糸で縫い上げる加賀縫いの花紋を好まれた。

 近ごろ、見た目賑やかで安直な樹脂加工のお祝い着が多い中、「四君子」のおしゃれ紋が、素敵にキマっている。

船橋市民新聞 11/1発行 第25号