染織あれこれ(27)
“紺屋”にもIT化の波


「紺 屋」(こ う や)

《は》

伊藤 吉之助(つるや伊藤)

●モニター画面に応援幕のデザイン
  前原剣友会の皆さん  H12/12

 21世紀の幕が開けた。  つるや伊藤は安政元年(1854)創業と伝わるが先年、長生郡睦沢町・長楽寺区の神社幟の復元に「お宅で拵(こしら)えた…、部落に口伝が…伝わる」と″嘉永元年製″の幟を持ち込まれている。古く定かでないが嘉永は安政よりも遡(さかのぼ)る。いずれにしても19世紀の事だ。

 江戸時代、どこにでもある紺屋(こうや)=染物屋として出発した当店。明治、大正、昭和、平成と時代が移り、20世紀を経て新世紀を無事に迎えられた喜び、感謝に堪えない。

 業界では「手拭(てぬぐ)い」や「暖簾(のれん)」「旗」「幟」などを総称して『印物(しるしもの)』と呼ぶ。紋章や名前、マークなど″諸々の印″を染め抜くからだろう。代表格は「印絆纏(はんてん)」。衿や背中に屋号や紋。腰部分にも。「控(ひかえ)」といって紋付きのように両胸に配する事もある。″シルシ″のオンパレードだ。

 染め手法は手拭い、浴衣の《注染(ちゅうせん)》。絆纏、暖簾の《糊置き》。染まっている色生地を後から白く染め抜く《抜染(ばっせん)》と様々。イベント用で数多く製作の旗幕類は近年、シルクスクリーンの《長板捺染》が圧倒的な主流。

 ここ数十年、技術革新であらゆる仕事のコンピュータ化には目を見張る。染織業界もすさまじく、デザイン、精練、染色、縫製までかつての手法が覆されたり、伝統手法に活かされたりしている。

 IT(情報通信技術)革命がしきりと叫ばれる今日だが、私どもでは受注した″印物″をメールで作業現場に送り、やり取りしている。かつては伝票を起こしFAXで送稿、電話での打合せが、大きく様変わり。  デザイン・下絵の制作も変化。手描き筆耕からパソコンの駆使。昨年、バックヤードのパソコンを事務所に移しマックのキューブに入れ替え設置した。お客様の目の前で意匠・配色など作成、提示しご覧戴く。嗜好のままに画面 が変化、時に感嘆の声も。

 もちろん、万能ではなくオペレーターの感性と技量に負うが、3世紀にわたる蓄積、紺屋伝統を先端技術で、21世紀に活かしたい。

船橋市民新聞 2001年1/1発行 第27号