染織あれこれ(45)
視線を集める力
「幟」のぼり 《は》

●府中・梅光江連の「芸能幟」デザイン
つるや伊藤・制作室 65×290cm
▲平成14年6月  

 今、幟(のぼり)と言えば、店頭の賑わい、イベントやキャンペーンに欠かせない
大事なツール。

 街頭で見る多くは広告、宣伝用だから、安い素材で、よりアピールできるデザインが好まれている。

 古くは戦国時代の「戦陣幟」があるが「神社幟」は、今に続いて祭礼にも登場する。
これらは厚手木綿に伝統的な本染めが主流。

 端午の節句には「武者絵幟」や「鍾馗幟」。「鯉幟」は五月の空を爽やかに泳ぐ。いずれも子どもの健やかな成長を願うものだ。

 鬼退治の桃太郎にも幟が付き物。劇場や寄席の「興行幟」。国技館には「相撲幟」。ご贔屓(ひいき)筋の贈り物。

 このところ元気なのが"かっぽれ"の連中。江戸芸だけに『江戸文字』で「連」の名前や印(マーク)を大きく染め出す多色物。

 「かっぽれ」は陽気な踊りだ。唄も「囃し言葉」から始まり軽妙、洒脱で滑稽。

 「かつぽれ かっぽれ 甘茶でかっぽれ ヨーイトナ ヨイヨイ」-----それから「沖の暗いのに白帆が見ゆる………」と、始まる。

踊り手は浴衣に角帯、タスキに手拭い。ステテコに白足袋。笛・太鼓・三味線・鉦の演奏。メリハリの利いた、楽しい男踊り。

 どちらの連も、皆さんお元気。見物連も、いっそう楽しく、元気が出るから不思議な「かっぽれ」だ。

 櫻川ぴん助の流れをくむ府中の「梅光江連」の幟は、桜花に観世水の紋章。赤色で指した「蕨熨斗(わらびのし)」は、ご贔屓様のプレゼントの印。

 「幟旗」を略しての「ノボリ」だが、語源に『昇り旗』との説がある。幅狭く丈が長い。一方の横に乳(ち)を付け竿に通す。細長い旗が"天に昇る勢い"から来たのだろうか。

 風にたなびく幟には、人々の視線を集める力が、秘められている。

 人の集うところには必ず『幟』。かっぽれ幟は『ゲンキ印』の一番だ。
船橋市民新聞 2002年 7/10発行 第45号