染織あれこれ(29)
百日荒行の成満幟

「幟」(のぼり)

《ろ》

伊藤 吉之助(つるや伊藤)

歓喜の声で迎える家族、檀信徒
市川市中山・法華経寺境内13/2/10 

 二月十日の早朝、日蓮宗・大本山中山法華経寺へ向かった。この日は″荒行″の『成満会(じょうまんえ)』。京成中山駅から黒門をくぐり参道を急いだが門前町には「南無妙法蓮華経」の″髭題目幟(ひげだいもくのぼり)″が立ち並ぶ。寺に向かう人たちの息は白い。

 まだうす暗い午前六時、白装束の修行僧が瑞門(ずいもん)から威勢よくお題目を唱えながら出行して来た。昨年十一月一日から百日間にわたる荒行でこの間、刃物は顔に当てず皆伸びきった髭姿。足元は素足に下駄 だ。

 結界を解かれた僧たちは奥の院などの各堂を参拝し成満報告の後、祖師堂で「大荒行成満会」を行い、全ての行事が終了したのは午前十時頃。境内で待ち侘びた家族や檀信徒らが歓喜の声で迎えた。

 出迎えの人々が、それぞれに奉納する『成満幟』は、お寺の山名、院名や修行僧などの名前を染め抜き、成満のお祝いを表すが待ち合わせの″標識″にもする。赤、紫、紺、緑、橙など、色とりどりの地色に多くは、日蓮宗の定紋「井桁に橘」と鬼子母神の「柘榴(ざくろ)」を″比翼紋″にして、″祝″の文字入り。

 比翼というのは、二羽の鳥が翼を並べることから来ているが、柘榴や橘に「土岐桔梗」の紋を比翼に組み合わせる幟も多い。桔梗は法華経寺の定紋。中には小槌を染めているものもあるが、所以(ゆえん)がどこからかは聞きもらした。

 サイズは大きいもので九〇cm巾に長さが四E近く。小さいものでも四十五cmに三m位 。林立して見事なものだ。生地は木綿。染は糊置きの筒染め友禅が主流だが、本染めが間に合わなかったのか?、シート文字の貼り合わせも散見。少しでも良い場所にと幟立は二、三日前から競って始まるという。何本あるか数えてみたが余りの数に二八〇本までで″移動″が始まり数えきれない。とにかく壮観だ。

 今回、百十六人が百日荒行された。全国各地へ帰り、成満幟を先頭に「帰山式」がおこなわれるが、修行の成果 を実践されて、開祖・日蓮聖人のように『日本の世直し』にご精進される事を祈った。 

船橋市民新聞 2001年3/1発行 第29号