染織あれこれ(51)
「色・柄」自由、個性表す
「白生地」(しろきじ)《い》

●紋意匠 立体感ある高級ちりめん
地紋が鮮明で色無地、色留袖に最適


 成人式の晴れ着には女性の振り袖が華やかだが、最近、本染めよりも、安物の樹脂加工品が目につく。

 既製の染め上がり品が、安直に手に入ることが一つの要因だろうか。中国をはじめ東南アジアの製品がハバを効かせている。

 個性を尊びファッションは「自己表現」と言いながら「帯・長襦袢・小物一式」のセット販売。利益優先、売り手の都合に流されているようで、残念だ。

 「誂え染め」というと、一見、高価そう。だが、決してそうではない。素材から選べ、色、柄を自由に染められる。それこそ自身の"個性"を表せる。


 "誂え"は白生地選びから始まる。一越縮緬(ちりめん)、太しぼ縮緬、紋意匠、綸子(りんず)、緞子(どんす)など、それぞれに特性のある生地を選ぶ。

 加工も無地染め、紋付きから小紋、付下げ、訪問着などと好みのまま。さらに刺繍や彩色。ホンモノのオートクチュールだから、仕上がりまでの時間は余裕を持つこと。「良いものを安く求める」秘訣の一つ。

 白生地、絹織物の産地で有名なのは京都府の丹後地方。「丹後縮緬」の産地。次いで滋賀県の長浜、「浜縮緬」で知られる。石川県・小松や新潟の五泉では縮緬とともに、羽二重や白紬。夏物の絽(ろ)なども織られている。

 昨年、成人式のお嬢さんの晴れ着にと、おばあ様の嫁入り衣裳だった『白無垢』を持ち込まれ相談を受けた。ご本人とお母様がご一緒でのご来店。

 半世紀前の品だが保存が良い。文字通り白生地なので友禅等、何にでも染まるが、シックに渋草色一つ紋付きの振袖に仕上げた。

 花嫁衣裳だけに地紋は縁起の良い「松」を意匠化した緞子。地紋柄を生かした訳だが素材の華やかな光沢が活きて、格調も高い。
 
 将来、結婚した後には袖を詰めて、「染抜き紋の無地の長着」。正装として長く着られる。素敵、賢い。

(つるや伊藤・伊藤吉之助)

船橋市民新聞 2003年 1/1発行 第51号