染織あれこれ(43)
〃野暮〃と「粋」
「手拭」 《ろ》

●喜寿のお祝い「鶴は千年 亀は万年」
▲平成14年4月  

 五月は浅草の「三社祭」が中旬。順天堂大学さくらキャンパスの「啓心寮祭」は三十一日から始まる。初夏を告げる「お祭りシーズン」の到来だ。祭り支度は色々だけど『手拭い』が見逃せない。

 それぞれに組織や地域の思いを込めてシャレた“印”を表すが、「思い」を込める事は祭に限らない。

 踊りの発表会の「まき物」や開店祝いの記念品。近ごろは海外へのおみやげに『和』が珍重される。かさばらず、重くなく、値段も手頃。プレゼント先に必要以上に気を使わせない。

 “ご挨拶代わり”にも使われる。クラス会に毎回出席の役員さん、体調崩されてご欠席。今年は“名代”に記念の手拭を参加させたいプラン。病院を抜け出しご家族と共にモチーフご持参、ご相談にみえた。

 七十七歳、節目の機会に二つの柄をご希望された。

 一つは「北上流れる和賀川の 清流に育つ一羽の雉が 東の空見て舞い上がり 迷(瞑)想五十有余年 各氏の恩を賜りて 喜寿の生涯 船の橋に咲く」と、半生を歌に詠んだもの。

 白地に故郷の「山と川」を背景に歌を中央。雉を配してまとめあげた。オーソドックスに横型とする。

 もう一つも歌を入れたもの。こちらは縦型。「嬉び(よろこび)の祝のころはまだ子供 鶴は千年 亀は万年」―。筆文字、行書体で墨黒々と表して、お祝いに赤文字で『喜寿』を染め出した。

 デザインが瞬時に決まることはまず少ない。獅子舞連中が「獅子毛」を散らす柄を描いても、大小ランダムとするのか、行儀よく並べるか。嗜好、感性は様々。野暮と粋とは紙一重。

 半生の思いを込めるに、出身地の景色を写真撮影、わざわざ持込みの打合せには熱がこもる。縦型の構図は戦前の「手拭型」を参考にしたが、いずれも出来映えにはご満足を戴いた。

 ご家族の愛情あふれる二柄だが、一日も早いご回復を心からお祈りする。
船橋市民新聞 2002年 5/1発行 第43号